部分環

における基本的概念である部分環を紹介します。

部分環(subring)

環 \(R\) の空ではない部分集合 \(S\) が, \(R\) の二項演算で環になるとき, \(S\) を \(R\) の部分環(subring)という.

また, \(R\) の零元からなる集合 \(\{0\}\) と \(R\) 自身は \(R\) の部分環であり, これらを自明な部分環(trivial subring)と呼ぶ.

\(\mathbf{Z}\) は \(\mathbf{Q}\) の部分環です。

例(行列環)

\(n\) 次正方行列全体の集合の列 \(M_n(\mathbf{Z})\subset M_n(\mathbf{Q})\subset M_n(\mathbf{R})\subset M_n(\mathbf{C})\) に対して,
小さい方は大きい方の部分環です。

例えば \(M_n(\mathbf{Z})\) は \(M_n(\mathbf{Q}), M_n(\mathbf{R}),M_n(\mathbf{C})\) の部分環です。

部分環の条件

環 \(R\) の空でない部分集合 \(S\) に対して次は同値である.

  1. \(S\) は \(R\) の部分環である.
  2. \(1\in S\) かつ, 任意の \(a,b\in S\) に対して \(a+b, -a, ab\in S\) が成立する.
  3. \(1\in S\) かつ, 任意の \(a,b\in S\) に対して \(-a+b, ab\in S\) が成立する.
証明

1\(\Longrightarrow\)2\(\Longrightarrow\)3は明らか.
3\(\Longrightarrow\)1を示す.

\(S\) は \(R\) の部分集合なので, 和の可換性 \(a+b=b+a\), 積の結合性 \(a(bc)=(ab)c\), 分配則は成り立つ.
\(a,b\in S\) に対して \(-a+b\in S\) なので, \(S\) は和に関してアーベル群である.
\(1, ab\in S\) なので, 積に関してモノイドである.
ゆえに \(S\) は環をなすので, \(S\) は \(R\) の部分環である.

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