極大イデアル

において重要な概念である極大イデアルについて紹介します。

極大イデアルは名前の通り、極大な、つまりそれより大きなイデアルがないイデアルです。

極大イデアル(maximal ideal)

可換環 \(R\) のイデアル \(I\) が, \(I\neq S\) かつ,イデアル \(J\) に対して

\[I\subset J\subset R\Longrightarrow J=I\ \ {\rm or}\ \ J=R\]

を満たすとき, \(I\) を \(R\) の極大イデアル(maximal ideal)という.

整数環 \(\mathbf{Z}\) と素数 \(p\) に対して \(p\mathbf{Z}=\) は \(\mathbf{Z}\) の極大イデアルです。

実数係数1変数多項式環 \(\mathbf{R}[X]\) と \(a\in\mathbf{R}\) に対して, 単項イデアル \((X-a)\) は \(\mathbf{R}[X]\) の極大イデアルです。

極大イデアルの剰余環

可換環 \(R\) とそのイデアル \(I\) に対して次は同値;

  1. \(I\) は極大イデアルである.
  2. 剰余環 \(R/I\) は体である.
証明

1 \(\Longrightarrow\) 2.
\(R/I\) の零ではない元を取ると \(a+I\ (a\in R)\) と書けるが,
\(a\notin I\) より イデアルの和 \((a)+I\) は \(I\) を含むイデアルで, \((a)+I\neq I\) である.
\(I\) は極大イデアルであるから \((a)+I=R\).
よって \(ab+c=1\) となる \(b\in R, c\in I\) が存在することとなり,
このとき \((a+I)(b+I)=ab+I=(1-c)+I=1+I\) なので
\(a+I\) は \(R/I\) において逆元を持つ.
ゆえに \(R/I\) は体である.

2 \(\Longrightarrow\) 1.
\(J\) を \(I\) より真に大きいイデアルとすると \(a\in J, a\notin I\) なる元 \(a\) が存在する.
\(a+I\neq I\) であるから \(R/I\) が体であることより \(b+I\ (b\in R)\) で
\((a+I)(b+I)=1+I\) となるものが存在する.
ゆえに \(c\in I\) で \(ab+c=1\) となるものが存在する.
\(a\in J, b\in R\) より \(ab\in J\).
\(c\in I\subset J\) なので \(1=ab+c\in J\) となり,
\(J=R\) が従い \(I\) が極大イデアルであることが分かる.

可換環 \(R\) の極大イデアルは素イデアルである.

証明

素イデアルに関する定理と上の定理から従う.

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