冪等半環

半環の中で重要な概念である冪等半環を紹介します。
半順序との対応があるので、演算と順序を同時に考えるときに役に立ちます。

冪等半環(idempotent semiring)

半環 \(S\) が冪等(idempotent)であるとは, \(S\) のすべての元が加法が冪等演算となること,
つまり \(\forall a\in S\ \ a+a=a\) を満たすことをいう.

このとき \(S\) を冪等半環(idempotent semiring)という.

通常、冪等というと乗法 \(a\cdot a=a\) を指すことが一般的ですが、冪等半環では加法の方を指します。

例1( トロピカル半環 )

トロピカル半環 \(\mathbf{T}\) は冪等半環です.
実際、和の演算は \(a\oplus b=\max\left\{a,b\right\}\)(または \(a\oplus b=\min\left\{a,b\right\}\)) なので \(a\oplus a =a\) を満たします。

例2(ブール半環 Boolean semiring)

真理値やコンピュータの世界で良く用いられる \(0\) と \(1\) の演算も冪等半環をなします。
\(\mathbf{B}=\left\{0, 1\right\}\) に演算 \(\vee ,\ \wedge\) を

  • \(0\vee 0 = 0,\ 0\vee 1=1,\ 1\vee 0 = 1,\ 1\vee 1 = 1\)
  • \(0\wedge 0 = 0,\ 0\wedge 1=0,\ 1\wedge 0=0,\ 1\wedge 1=1\)

で定めると \(\mathbf{B}\) は冪等半環となります。
(分かりにくければ \(\vee\) を or や \(+\) に、\(\wedge\) を and や \(\cdot\) に変えて考えてください。)

この \(\mathbf{B}\) をブール半環(Boolean semiring)といいます。

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