帰納的集合

公理的集合論や自然数を定義するときに重要である帰納的集合について紹介します。

帰納的集合(inductive set)

集合 \(X\) が帰納的(inductive)であるとは

  • \(\emptyset\in X\)
  • \(x\in X\) ならば \(x\cup\{x\}\in X\)

が成り立つことをいう.

Suzume
Suzume

帰納的集合の存在は公理的集合論の無限公理で保障されています。

帰納的集合の共通部分

帰納的集合の族 \(\{X_\lambda\}_{\lambda\in\Lambda}\) について, \(\bigcap_{\lambda\in\Lambda}X_\lambda\) は帰納的集合である.

証明

任意の \(\lambda\in\Lambda\) に対して \(\emptyset\in X_\lambda\) より, \(\emptyset\in\bigcap_{\lambda\in\Lambda}X_\lambda\).
また, \(x\in\bigcap_{\lambda\in\Lambda}X_\lambda\) ならば,任意の \(\lambda\in\Lambda\) に対して \(x\in X_\lambda\) であるから \(x\cup\{x\}\in X_\lambda\).
ゆえに \(x\cup\{x\}\in\bigcap_{\lambda\in\Lambda}X_\lambda\).

最小の帰納的集合

帰納的集合 \(X\) に対して \(\mathbf{N}_X\) を \(X\) の部分集合で帰納的集合であるものすべての共通部分とする.

このとき, 任意の帰納的集合 \(X, Y\) に対して \(\mathbf{N}_X=\mathbf{N}_Y\) である.

よって \(\mathbf{N}_X\) は \(X\) の取り方に依らずに定まる.

\(\mathbf{N}=\mathbf{N}_X\) と定義すると, \(\mathbf{N}\) は(包含関係で)最小の帰納的集合である.

証明

\(\mathbf{N}_X=\mathbf{N}_Y\) であること
集合 \(A\) を \(X\) の部分集合で帰納的な集合とする.
\(A\cap Y\subset Y\) かつ \(A\cap Y\) も帰納的集合であるから \(\mathbf{N}_Y\subset A\cap Y\).
\(\mathbf{N}_Y\subset A\cap Y\subset A\subset X\) より \(\mathbf{N}_Y\subset X\).
同様にして \(\mathbf{N}_X\subset Y\).
ゆえに \(\mathbf{N}_X=\mathbf{N}_Y\) である.

\(\mathbf{N}\) の最小性
\(X\) を任意の帰納的集合とすると, \(\mathbf{N}=\mathbf{N}_X\subset X\) より
\(\mathbf{N}\) は包含関係で最小である.

\(\mathbf{N}\) の中身

\[\mathbf{N}=\left\{\ \emptyset,\ \{\emptyset\},\ \{\emptyset,\ \{\emptyset\}\},\ \{\emptyset,\ \{\emptyset\},\ \{\emptyset,\ \{\emptyset\}\}\}, \ldots \ \right\}\]

証明

\(X=\left\{\ \emptyset,\ \{\emptyset\},\ \{\emptyset,\ \{\emptyset\}\},\ \{\emptyset,\ \{\emptyset\},\ \{\emptyset,\ \{\emptyset\}\}\}, \ldots \ \right\}\) とおき,
\(\sigma\ \colon\ X\to X\ ;\ \sigma(x)=x\cup\{x\}\) とおくと
\(X=\left\{\ \emptyset,\ \sigma(\emptyset),\ \sigma(\sigma(\emptyset)),\ \ldots\ ,\ \sigma(\cdots\sigma(\emptyset)\cdots),\ \ldots\ \right\}\) となっているが,
帰納的集合の定義より, \(X\) は帰納的集合である.
よって \(\mathbf{N}\subset X\).
また, 任意の帰納的集合は \(\sigma(\cdots\sigma(\emptyset)\cdots)\) を元に含まなければならないので \(X\subset\mathbf{N}\).
ゆえに \(\mathbf{N}=X\).

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