半環における商半体について紹介します。
整域を \(0\) 以外で局所化すると、それを含む最小の体が得られましたが、同様に
整半環を \(0\) 以外で局所化すると、それを含む最小の半体が得られます。
商半体
\(S\) を可換な整半環とする. \(T=S\,\backslash\{0\}\) とすると \(T\) は積閉集合である.
この \(T\) による局所化 \(T^{-1}S\) は \(S\) を含む最小の半体となり,
\(S\) の商半体(quotient semifield)と呼ばれる.
また, \(\mathrm{Q}(S), \mathrm{Quot}(S)\) のように書いたりする.
証明
商半体が半体であることを示す.
\(\mathrm{Q}(S)=T^{-1}R\) は可換半環なので, \(0\) でない任意の元が逆元を持つことを示せばよい.
\(0\) でない \(k\in \mathrm{Q}(S)\) を取る.
すると \(a, b\in T\) を用いて \(k=\frac{a}{b}\) と書ける.
\(a\in S\) なので \(\frac{b}{a}\in \mathrm{Q}(S)\) となるが \(\frac{a}{b}\frac{b}{a}=1\) なので \(k\) は逆元を持つ.
以上より \(\mathrm{Q}(S)\) は半体である.
商半体が \(S\) を含む最小の半体であることを示す.
\(F\) を \(S\) を含む半体とする. 任意の \(k\in \mathrm{Q}(S)\) は \(a\in S\) と \(b\in T\) を用いて \(k=ab^{-1}\) と書ける.
\(a\in S\) なので \(a\in F\).
また, \(b\in T\subset S\) なので \(b\in F\). さらに \(b\neq 0\)で \(F\) は体なので \(b^{-1}\in F\).
よって, \(k=ab^{-1}\in F\). ゆえに \(\mathrm{Q}(S)\subset F\).
例
自然数半環 \(\mathbf{N}=\{0,1,2,3,\ldots\}\) の商半体は非負有理数半体 \(\mathbf{Q}_{\geq 0}\).
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