1変数多項式環

代数学において非常に重要な概念である多項式環について紹介します。

多項式

環 \(R\) と不定元 \(X\) に対して, \(R\) 係数の \(X\) に関する多項式(polynomial)とは\[\sum_{i=0}^na_iX^i=a_0+a_1X+a_2X^2+\cdots+a_nX^n\quad(a_0, a_1,a_2,\ldots,a_n\in R)\] の形の式の事をいう.

各々の \(a_iX^i\) を(\(i\)次の)(term), \(a_i\) を項の係数(coefficient)という.
特に \(0\) 次の項 \(a_0\) を定数項(constant term)という.

また, 項が1つのみの多項式を単項式(monomial)という.

多項式 \(f(X)=a_0+a_1X+a_2X^2+\cdots+a_nX^n\) に対して, \(\deg f=\max\{\,i \ |\ a_i\neq 0\,\}\) として, \(f(x)=0\) に対しては \(\deg f=-\infty\) と定義する.
\(\deg f\) を \(f\) の次数(degree)という.

\(\mathbf{Z}\) 係数の多項式として

\(f(X)\)\(\deg f\)定数項単項式
\(2X^2-5X+3\)23×
\(-7X^8+5X^3+2X^2\)80×
\(3X^4\)40
\(13\)013

1変数多項式環

\(R\) を環, \(X\) を不定元とする.

\(R\) 係数の \(X\) に関する多項式全体の集合を \(R[X]\) と書き,
\(R\) 上の1変数多項式環(polynomial ring in one variable) という.

実際 \(R[X]\) は環構造を持ち, \(f(X), g(X)\in R[X]\) に対して \[
f(X)=\sum_{i=0}^na_iX^i\quad (k>n\Longrightarrow a_k=0)\\
g(X)=\sum_{i=0}^mb_iX^i\quad (k>m\Longrightarrow b_k=0)
\] のとき \[
f(X)+g(X)=\sum_{i=0}^{\max\{n,m\}}(a_i+b_i)X^i\\
f(X)g(X)=\sum_{i=0}^{n+m}\left(\sum_{j=0}^ia_jb_{i-j}\right)X^i
\] で和と積を定義すると \(R[X]\) は環となる. \(R[X]\) の零元は \(0\in R\) で単位元は \(1\in R\) である.

1変数多項式環の基本事項

  1. \(R\) は \(R[X]\) の部分環である.
  2. \(R\) が可換環ならば \(R[X]\) も可換環である.
  3. \(R\) が整域ならば \(R[X]\) も整域である.
証明

1.明らか

2. \(g(X)f(X)=\sum_{i=0}^{n+m}\left(\sum_{j=0}^ib_ja_{i-j}\right)X^i=\sum_{i=0}^{n+m}\left(\sum_{j=0}^ia_jb_{i-j}\right)X^i=f(X)g(X)\)

3. \(f(X)\neq0, g(X)\neq0\) で, \(\deg f=n, \deg g=m\) とすると,
\(f(X)=\sum_{i=0}^na_iX^i\ (a_n\neq0), g(X)=\sum_{i=0}^mb_iX^i\ (b_m\neq0)\) と書ける.
\(f(X)g(X)=\sum_{i=0}^{n+m}\left(\sum_{j=0}^ia_jb_{i-j}\right)X^i\) であるが, \(X^{n+m}\) の係数を考えると \(a_nb_m\neq0\) なので \(f(X)g(X)\neq0\) が分かる.

整数係数1変数多項式環 \(\mathbf{Z}[X]\) は整域である.
\(f(X), g(X)\in \mathbf{Z}[X]\) が \(f(X)=2X^2+X+3, g(X)=5X-2\) のとき \[
f(X)+g(X)=2X^2+6X+1\\
f(X)g(X)=10X^3+X^2+13X-6
\] である.

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