像と核

準同型写像に付属する概念として、像と核を紹介します。

定義

2つの群 \(G,\ G^\prime\) と, その間の準同型写像 \(f\ \colon\ G \to G^\prime\) に対して, \(e^\prime\) を \(G^\prime\) の単位元とするとき\[\mathrm{Ker}\,f=\{x\in G\ |\ f(x)=e^\prime\}\\ \mathrm{Im}\,f=\{f(x)\in G^\prime\ |\ x\in G\}\]とおく.\(\mathrm{Ker}\,f\) を \(f\) の(kernel), \(\mathrm{Im}\,f\) を \(f\) の(image)という.

像の性質

群の準同型写像 \(f\ \colon\ G \to G^\prime\) に対して, \(\mathrm{Im}\,f\) は \(G^\prime\) の部分群である.

証明

任意の \(\alpha,\beta\in \mathrm{Im}\,f\) を取ると, ある元 \(a, b\in G\) を用いて \(\alpha=f(a),\beta=f(b)\) と表せる. このとき, \(\alpha^{-1}=f(a)^{-1}=f(a^{-1})\) であるから, \[\alpha^{-1}\beta=f(a^{-1})f(b)=f(a^{-1}b)\] となり, \(a^{-1}b\in G\) より \(\alpha^{-1}\beta\in \mathrm{Im}\,f\) が従う. ゆえに \(\mathrm{Im}\,f\) は \(G^\prime\) の部分群である.

核の性質

群の準同型写像 \(f\ \colon\ G \to G^\prime\) に対して, \(\mathrm{Ker}\,f\) は \(G\) の正規部分群である.

証明

任意の \(a,b\in \mathrm{Ker}\,f\) に対して, \[f(a^{-1}b)=f(a^{-1})f(b)=f(a)^{-1}f(b)=ee=e\]なので, \(a^{-1}b\in \mathrm{Ker}\,f\). ゆえに \(\mathrm{Ker}\,f\) は \(G\) の部分群.

また, 任意の \(x\in G,\ a\in \mathrm{Ker}\,f\) に対して, \[f(xax^{-1})=f(x)f(a)f(x^{-1})=f(x)ef(x)^{-1}=e\]なので, \(xax^{-1}\in \mathrm{Ker}\,f\). ゆえに \(\mathrm{Ker}\,f\) は \(G\) の正規部分群.

準同型の単射性

2つの群 \(G,\ G^\prime\) と, その間の準同型写像 \(f\ \colon\ G \to G^\prime\) に対して次は同値;

  1. \(f\) は単射である.
  2. \(\mathrm{Ker}\,f=\{e\}\)
証明

1\(\Rightarrow\)2 は明らか.

2\(\Rightarrow\)1 を示す.
\(f(x)=f(y)\) とすると, \(f(xy^{-1})=f(x)f(y)^{-1}=e^\prime\) であるから \(xy^{-1}\in\mathrm{Ker}\,f\) であるが,
\(\mathrm{Ker}\,f=\{e\}\) より \(xy^{-1}=e\) なので \(x=y\). ゆえに \(f\) は単射.

一般線型群 \(GL_n(\mathbf{R})\) と \(0\) 以外の実数の集合 \(\mathbf{R}^\times\) に対して, 写像 \(f\ \colon\ GL_n(\mathbf{R}) \to \mathbf{R}^\times\) を \( A\in GL_n(\mathbf{R}) \) に対して \(f(A)=\det A\) で定めると \(f\) は準同型写像となります。このとき, \[\mathrm{Ker}\,f=SL_n(\mathbf{R})\\ \mathrm{Im}\,f=\mathbf{R}^\times\] となっています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました