群における基本的概念である部分群を紹介します。
部分群(subgroup)
群 \(G\) の空ではない部分集合 \(H\) が, \(G\) の二項演算で群になるとき, \(H\) を \(G\) の部分群(subgroup)という.
また, \(G\) の単位元からなる集合 \(\{e\}\) と \(G\) 自身は \(G\) の部分群であり, これらを自明な部分群(trivial subgroup)と呼ぶ.
例
整数全体 \(\mathbf{Z}\), 有理数全体 \(\mathbf{Q}\), 実数全体 \(\mathbf{R}\), 複素数全体 \(\mathbf{C}\) はそれぞれ通常の加法において群ですが,
なので,
- \(\mathbf{Z}\) は \(\mathbf{Q},\ \mathbf{R},\ \mathbf{C}\) の部分群
- \(\mathbf{Q}\) は \(\mathbf{R},\ \mathbf{C}\) の部分群
- \(\mathbf{R}\) は \(\mathbf{C}\) の部分群
となります。
例(部分群でない)
奇数の集合 \(\mathbf{Odd}\) は \(\mathbf{Z}\) の部分集合ですが,
和について閉じていない(例えば \(3+1=4\) は偶数)ので, 部分群ではありません。
例
実数上の正則 \(n\) 次正方行列全体 \(GL_n(\mathbf{R})\) は通常の積に関して群をなします。
また \(SL_n(\mathbf{R})=\{A\in GL_n(\mathbf{R})|\det A=1 \}\) も通常の積で群をなします。
このとき, \(SL_n(\mathbf{R})\) は \(GL_n(\mathbf{R})\) の部分群となっています。
\(GL_n(\mathbf{R})\) を一般線型群(general linear group), \(SL_n(\mathbf{R})\) を特殊線型群(special linear group)という.
部分群であることを示すためによく用いる命題を紹介します。
部分群の条件
群 \(G\) の空でない部分集合 \(H\) に対して次は同値である.
- \(H\) は \(G\) の部分群である.
- 任意の \(a,b\in H\) に対して \(ab\in H\) かつ \(a^{-1}\in H\) が成立する.
- 任意の \(a,b\in H\) に対して \(a^{-1}b\in H\) が成立する.
証明
1\(\Longrightarrow\)2\(\Longrightarrow\)3は明らか.
3\(\Longrightarrow\)1を示す.
\(H\) は空ではないので, ある元 \(a\) を含み, \(e=a^{-1}a\in H\).(単位元の存在)
任意の \(a\in H\) に対して, \(a, e\in H\) より \(a^{-1}=a^{-1}e\in H\).(逆元の存在)
任意の \(a,b\in H\) に対して, \(a^{-1}, b\in H\) より \(ab=(a^{-1})^{-1}b\in H\).(積の閉性)
結合則は元の \(G\) が満たすので \(H\) も満たす.
よって \(H\) は群をなし, ゆえに \(H\) は \(G\) の部分群である.
最後に部分集合の演算・表記について紹介します。
定義
\(G\) の部分集合 \(A,B\) に対して,
- \(AB=\{ab\ |\ a\in A,\ b\in B\}\)
- \(A^{-1}=\{a^{-1}\ |\ a\in A\}\)
と定義する. また, \(x, y\in G\) に対して
- \(xA=\{xa\ |\ a \in A \}\)
- \(Ax=\{ax\ |\ a \in A \}\)
- \(xAy=\{xay\ |\ a \in A \}\)
と定める.
※一元集合 \(\{x\}\) のときも \(\{x\}A=xA, A\{x\}=Ax\) のように書く.
この記号を用いると先の命題は
- \(H\) は \(G\) の部分群である.
- \(HH\subset H\) かつ \(H^{-1}\subset H\) が成立する.
- \(H^{-1}H\subset H\) が成立する.
のようになります。
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