冪等半環と半順序

冪等半環半順序を定義することが出来ます。

順序を演算で考える事が出来るため、より代数的に処理できます。

冪等半環と半順序

冪等半環 \(S\) に対して, 二項関係 \(\leq\) を \(a,b\in S\) に対して

  • \(a+b=b\) のとき \(a\leq b\)

で定義すると, \(\leq\) は半順序で \(S\) は半順序集合となる.

証明

(反射律)

加法の冪等性より \(a+a=a\) なので \(a\leq a\).

(推移律)

\(a\leq b,\ b\leq c\) のとき \(a+b=b,\ b+c=c\) なので
\[a+c=a+(b+c)=(a+b)+c=b+c=c\] ゆえに \(a\leq c\).

(反対称律)

\(a\leq b,\ b\leq a\) のとき, 加法は可換なので \(b=a+b=b+a=a\).

以上より、 冪等半環を半順序集合として捉えることが出来ます。
半環でも同じように半順序を定義できそうですが、反射律が一般的には成立しません。

この冪等半環上の半順序の性質を見てみます。

冪等半環上の半順序の性質

冪等半環 \(S\) に対して, \(\leq\) を上で定めた半順序とする.
このとき, 任意の \(a,b,c\in S\) に対して以下が成り立つ.

  1. \(0\leq a\)
  2. \(a\leq b \Longrightarrow ac\leq bc,\ ca\leq cb\)

証明

1.\(0+a=a\) より \(0\leq a\).

2.\(a+b=b\) の両辺に右から \(c\) をかけると \(ac+bc=bc\). 左から \(c\) をかけると \(ca+cb=cb\).

これは「冪等半環の元は全て”正(positive)”である」と言っているようなイメージです。

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