モノイド準同型

マグマ半群に準同型があるようにモノイドにも準同型写像が定義されます。

マグマ、半群、さらには群の準同型写像と違って、条件が1つ加わります。

準同型の「構造を保つ」をという基本的な概念からすれば自然な定義になっていると思います。

モノイド準同型(monoid morphism)

2つのモノイド \(M,\ N\) に対して, 写像 \(f\ \colon\ M \to N\) が任意の \(x, y\in M\) に対して

  • \(f(xy)=f(x)f(y)\)
  • \(f(1_M)=1_N\)

を満たすとき, \(f\) を \(M,\ N\) 間のモノイド準同型(monoid homomorphism)という.

特に, \(f\) が全単射であるとき,モノイド同型(monoid isomorphism)といい, \(M\) と \(N\) は(モノイドとして)同型(isomorphic) であるという.

\(M\) と \(N\) が同型であるとき, \(M\cong N\) と書く.

2つのモノイド \(M,\ N\) 間の半群準同型はモノイド準同型とは限りません。

例えば \(M= \left\{1,\ 2,\ 3,\ldots\right\} ,\ N=\left\{0, 1\right\}\) で演算は通常の積を考えます。
\(f\ \colon\ M \to N\) を \(f(n)=0 \ (n\in M)\) で定めると \(f\) は半群準同型ですが、単位元を保たないのでモノイド準同型ではありません。

これとは対照的に、2つの群の間の半群準同型は群準同型となります。実際、
\(f(1)f(1)=f(1\cdot 1)=f(1)\) となりますが、\(f(1)^{-1}\) の存在が保証されているので、
両辺に \(f(1)^{-1}\) をかければ \(f(1)=1\) が導けます。

モノイドという「構造」を保つためには、「単位元を保つ」という条件は必要不可欠です。

実数の集合を \(\mathbf{R}\), 正の実数の集合を \(\mathbf{R}^+\) とするとき,
\(M= \mathbf{R} , N= \mathbf{R}^+\) とおくと, \((M,+),(N,\,\cdot\,)\) はモノイドである.
このとき \(M\) の単位元は \(0\), \(N\) の単位元は \(1\) である.
\(f\ \colon\ M \to N\) を \(f(x)=e^x\) で定義すると \(f\) はモノイド準同型である. 実際

  • \(f(x+y)=e^{x+y}=e^xe^y=f(x)f(y)\)
  • \(f(0)=e^0=1\)

となるので条件を満たす.

さらに \(f\) は全単射であるから \(M\) と \(N\) はモノイド同型である.

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