集合を同値関係を用いて分割することが出来ます。数学を学んでいく上での必須事項です。
商集合(quotient set)
集合 \(S\) 上の同値関係 \(\sim\) に対して, 商集合 \(S/{\sim}\) を\[S/{\sim}=\{\ \overline{x}\ |\ x\in S\ \}\]で定義する. \(\overline{x}\) は \(x\) の同値類を表す.
完全代表系と類別
集合 \(S\) 上の同値関係 \(\sim\) による商集合 \(S/{\sim}\) に対して, \(S\) の部分集合 \(R\) で
- \(x,y\in R\) に対して \(x\neq y\Longrightarrow \overline{x}\neq \overline{y}\)
- \(S/{\sim}=\{\overline{x}\ |\ x\in R\}\)
を満たすものが存在する.
この \(R\) を \(\sim\) の完全代表系(complete set of representatives)という.
このとき
- \(\displaystyle S=\bigcup_{x\in R}\overline{x}\)
のように書ける.
商写像(自然な全射・自然な射影・標準射影)
写像 \(\pi\ \colon\ S \to S/{\sim}\ ;\ x\mapsto\overline{x} \) は全射である.
この \(\pi\) を商写像という. (自然な全射・自然な射影・標準射影などともいう.)
明らかなので、証明はしません。
同値関係の例に対応して、商集合の例を紹介します.
例1
例1の同値関係 \(=\) に対して\[A/{=}=\left\{\ \{a\}\ |\ a\in A\ \right\}\]となる. \(A/{=}\) は \(A\) と同一視出来る.(厳密には同じものではない.)
例2
例2の同値関係 \(\equiv ({\rm mod}\ n)\) に対して\[\mathbf{Z}/{\equiv}=\left\{\overline{0}, \overline{1}, \ldots, \overline{n-1}\right\}\]となる. 通常, この \(\mathbf{Z}/{\equiv}\) を \(\mathbf{Z}/n\mathbf{Z}\) と書き \(n\) を法とする剰余環(剰余類環)などという.
例3
例3の同値関係 \(\sim\) に対して \(\mathbf{x}=(x_0,\ x_1,\ \ldots\ ,\ x_n)\in A\) の同値類を \([x_0\ \colon\ x_1\ \colon\ \ldots\ \colon\ x_n]\) と書くとき, \[A/{\sim}=\left\{\ [x_0\ \colon\ x_1\ \colon\ \ldots\ \colon\ x_n]\ |\ (x_0,\ x_1,\ \ldots\ ,\ x_n)\in A\ \right\}\]となる. 注意として \([0\ \colon\ 0\ \colon\ \ldots\ \colon\ 0]\) という元は存在しない. 通常, この \(A/{\sim}\) を \(\mathbf{RP}_n\) などと書き, \(n\)次元実射影空間という. \([x_0\ \colon\ x_1\ \colon\ \ldots\ \colon\ x_n]\) を斉次座標という.
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