半群を考えていく上で必要不可欠な部分半群とイデアルについて紹介します。
部分半群(subsemigroup)
半群 \(S\) の空でない部分集合 \(T\) が
\[a, b\in T \Longrightarrow ab\in T\]
を満たすとき, \(T\) を \(S\) の部分半群(subsemigroup)という.
\(T\) が半群となっていることは簡単に確かめられる.
イデアル(ideal)
半群 \(S\) の空でない部分集合 \(I\) が
\[s\in S,\ a\in I\Longrightarrow sa\in I\]
を満たすとき, \(I\) を \(S\) の左イデアルという.同様に
\[s\in S,\ a\in I\Longrightarrow as\in I\]
を満たすとき, \(I\) を \(S\) の右イデアルという.
\(I\) が左イデアルかつ右イデアルであるとき, 両側イデアルまたは単にイデアル(ideal)という.
左イデアル, 右イデアル, イデアルは全て \(S\) の部分半群である.
可換の場合はこれらは全て一致する概念である.
半群 \(S\) の空でない部分集合 \(A, B\) に対して
\[AB=\{\ ab\ |\ a\in A, b\in B\ \}\]とするとき,
- \(T\) が \(S\) の部分半群である条件は \(T^2=TT\subset T\)
- \(I\) が \(S\) の左イデアルである条件は \(SI\subset I\)
- \(I\) が \(S\) の右イデアルである条件は \(IS\subset I\)
- \(I\) が \(S\) のイデアルである条件は \(SIS\subset I\)
と書ける.
例
自然数の集合 \(\mathbf{N}=\{\ 0, 1, 2, 3, \ldots \ \}\) に通常の積を入れると, \(\mathbf{N}\) は半群である.
ここで奇数の集合 \(\mathbf{N}_{odd}=\{\ 1, 3, 5, \ldots \ \}\) と偶数の集合 \(\mathbf{N}_{even}=\{\ 0, 2, 4, \ldots \ \}\) を考える.\[\begin{eqnarray*}
({\bf 奇数})\times({\bf 奇数})&=&({\bf 奇数})\\
({\bf 偶数})\times({\bf 偶数})&=&({\bf 偶数})\\
({\bf 奇数})\times({\bf 偶数})&=&({\bf 偶数})
\end{eqnarray*}\]なので, \(\mathbf{N}_{odd}, \mathbf{N}_{even}\) は共に \(\mathbf{N}\) の部分半群である.
\(\mathbf{N}_{even}\) は \(\mathbf{N}\) のイデアルであるが, \(\mathbf{N}_{odd}\) はイデアルではない.
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