二項演算

代数的構造の基本となる二項演算について紹介します。

定義

\(X\) を集合とするとき, 写像 \(\mu\ \colon\ X\times X \rightarrow X\) を \(X\) 上の二項演算という.
このとき, \(X\) は \(\mu\) について閉じている, \(\mu\) は \(X\) において閉じているという.
また \(X\) のことを台集合という.

\(x, x^\prime \in X\) に対しての二項演算 \(\mu\) は \(\mu(x,\,x^\prime)\) と書くが, 特定の演算, 例えば \(+, \ \cdot\ , \times\) などの時には \(x+x^\prime, x\cdot x^\prime, x\times x^\prime\) のように中置記法で書かれることが多い. さらに積 \(x\cdot x^\prime\) は \(xx^\prime\) と省略されることが多い.

整数, 有理数, 実数, 複素数などで定義されている和 \(+\) や積\(\ \cdot\ \)は二項演算である.

整数に対して最大公約数や最小公倍数と取る操作は二項演算である(\(n, m \in\mathbf{Z}\) に対して \(\gcd(n,m)\)や\(\rm{lcm}(n,m)\)).

実\(n\)次正方行列全体の集合\(M_n(\mathbf{R})\)とするとき, \([\ ,\ ]\ :\ M_n(\mathbf{R})\times M_n(\mathbf{R})\rightarrow M_n(\mathbf{R})\) を
\([A, B]=AB-BA\)で定義すると \([\ ,\ ]\) は二項演算となる.


Cayley table(乗算表)

集合 \(X=\{\ a_1,\ a_2,\ a_3,\ \ldots,\ \}\) 上に二項演算 \(\mu\) が定義されている時, その演算を以下のような表で書くことがある:\[\begin{array}{c|cccc} \mu & a_1 & a_2 & a_3 & \cdots \\ \hline a_1 & \mu(a_1,\,a_1) & \mu(a_1,\,a_2) & \mu(a_1,\,a_3) & \cdots\\ a_2 & \mu(a_2,\,a_1) & \mu(a_2,\,a_2) & \mu(a_2,\,a_3) & \cdots \\ a_3 & \mu(a_3,\,a_1) & \mu(a_3,\,a_2) & \mu(a_3,\,a_3) & \cdots \\ \vdots & \vdots & \vdots & \vdots & \ddots \end{array}\]この表のことをCayley table乗算表とよぶ.

集合 \(X=\{\ a,\, b,\, c\ \}\) 上に積 \(\cdot\) を\[\begin{array}{ccc} a\cdot a = a, & a\cdot b = b,& a\cdot c = c\\ b\cdot a = b, & b\cdot b = b,& b\cdot c = c\\ c\cdot a = b, & c\cdot b = c,& c\cdot c = a\end{array}\]で定義されているとき\[\begin{array}{c|ccc} \cdot & a & b & c \\ \hline a & a & b & c \\ b & b & b & c \\ c & b & c & a \end{array}\]のように書く.

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